
自社株買いとは?
自社株買いとは企業が自社の株式を市場から買い戻すことです。企業は株式を発行して資金調達をしますが、いったん発行した株式を再び買い戻すわけです。これによりどのような効果があるのでしょうか。まずは通常自社株を購入した場合どのような用途に利用するのかについて見ていきます。
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ストックオプションか消却用に
通常自社株はストックオプション(自社株購入権)用に購入するか、もしくは購入した後自社株の消却に用います。消却とは減資の一種で例えば株式発行数が100株として、市場で10株購入してその10株を消却すると発行数は90株へと減少します。結果株主資本はスリム化します。
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自社株の消却による効果
自社株の購入・消却では「株主への売り場の提供」、「ROEの上昇」、「EPSの上昇」という3つの効果が期待できます。まずは株主への売り場の提供について説明します。自社株の購入では会社がある程度まとまった買いを入れてくれるので、株式の下落のリスクは通常よりも低くなりなります。ちょうどこの時期に株式の売却を検討している投資家に対してはいい売り場を提供することになります。
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ROEの上昇について
自社株を購入して消却すると株式の発行数は減少し、株主資本はスリム化します。株主資本がスリム化すれば当期純利益と株主資本の比率であるROEは改善します。ROEとは投資家に対してこれだけの株主資本でこれだけ当期純利益を稼ぐことが出来ますよという投資収益性を表す指標のひとつです。企業では資金調達のために銀行からの借入に頼るほか、社債や株式を発行して一般投資家から広く資金を調達する手段も用いられます。投資家から資金を調達するためには投資家に対してその投資で高い収益が見込めることをアピールしなければなりません。そのための指標の一つがROEです。ROEについては自己資本当期利益率(ROE)で詳しく解説しています。
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EPSの上昇について
EPSとは1株あたりの利益のことです。自社株の購入・消却により株式発行数が減少すると分子である利益は変わらないものの、分母である株式発行数が減少するので1株あたりの利益であるEPSは改善します。投資家は投資の判断材料のひとつとしてその投資でどれだけの収益が上がるのかを見ています。1株あたりの利益が増えればそれだけ投資への魅力も増えるため、株が買われ、結果株価は上昇します。現株主にとっては、会社の自社株の購入・消却によりEPSが増え、株価が上昇することになるので、持ち株の価値があがることになります。これが自社株買い・消却が株主への還元となる理由の一つです。
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金庫株って何?
従来はストックオプション(自社株購入権)や消却など特定の目的を持ってでしか自社株を購入することはできませんでした。これが平成13年の商法改正により、特定の理由をもたなくても自社株を購入することが可能となりました。これにより購入した自社株は金庫株として扱うことが可能となりました。金庫株は貸借対照表の総資産の株主資本の部で自己株式として記載され、頭にマイナスがつけられて表記されています。

自己株式は消却の場合と同じようにその取得額が株主資本の金額から差し引かれます。この結果消却と同じようにROEの上昇やEPSの上昇、株価の上昇といった効果が期待できます。つまり現時点では金庫株であるにもかかわらず消却と同じような効果が期待できるわけです。
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金庫株のその後の扱い
金庫株はしばらくはそのまま保有し続けることが多いですが、いずれは「消却」か「処分」をすることになります。消却であればそのままROEの上昇やEPSの上昇、株価の上昇といった効果は変わりませんが、処分である場合には注意が必要です。
処分とは会社が購入した自社株を再び市場で売却する行為です。これにより売り圧力が増えることにより需給バランスは悪化して株価下落の要因の一つとなります。また処分により消却扱いされていた自己株式分が再び株主資本の総額へとプラスされるので、その結果ROEとEPSは下落し、株価も下落する要因となります。
金庫株はその後の扱いによりこうした指標や株価へも影響が大きく変わってくるのです。
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※参考資料
経営分析入門―ビジネス・ゼミナール
新版経営分析の基本がハッキリわかる本
自己資本当期利益率(ROE) ||
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text 2016/05/31
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