![]() 損益分岐点で分析 | ||
損益分岐点とは総費用と売上高が一致する点で、売上がこの点を上回ると利益が発生し、下回ると損失が発生します。損益分岐点は損益の目安となる売上高であり、売り上げ目標など企業の経営戦略上重要な指標となります。損益分岐点ではまず総費用を売上と連動して金額が増減する変動費と売上とは関係なく発生する固定費に分ける必要が有ります。しかしながら損益計算書では費用は変動費と固定費に分類して掲載されてはいません。そのため外部から費用を変動費と固定費に正確に分類することはなかなか難しいのが現状です。こうした理由から損益分岐点は主に内部分析で利用されることが多い指標です。今回は外部からの分析ということで、損益計算書から費用を大まかに固定費と変動費に分類して損益分岐点を求めていきたいと思います。今回分析対象とするのは国内大手日用品メーカーの花王です。 ■今回使う指標 損益分岐点 限界利益 |
使用するのは単体の損益計算書と製造原価計算書です。連結では売上原価の内訳を記載した製造原価計算書の開示義務がないので開示されていないことが多いため、今回は単体での数字を使います。以下の表では変動費に分類したものをその横に○を記載して表示しています。
まず総費用の金額を求めます。総費用の金額は売上高から経常利益を引いた金額で656,915百万円です。この総費用から変動費の総額491,483百万円を引くと固定費である165,432百万円が導き出されます。
変動費と固定費、売上高がわかれば以下の式で損益分岐点(BEP)がわかります。 ![]() 458,260百万円が損益分岐点売上高になります。実際の売上高768,565百万円から損益分岐点売上高を引いた金額である310,305百万円に限界利益率をかけると経常利益である112,023百万円を求めることが出来ます。限界利益とは売上高から変動費を引いた金額で、利益と固定費が含まれています。損益分岐点の時点ですでに固定費は回収されているのでそこから先の売上高から変動費を引いた限界利益はすべて利益となります。詳しくは以下の限界利益の説明のページをご覧ください。 限界利益 112.023百万円という数字は実際の経常利益である111,650百万円とは多少の誤差は有りますが、これは外部分析では正確に変動費と固定費を分類できないために生じるものです。誤差といってもこの程度であれば十分実用的な範囲であるといえるでしょう。今回実際に損益分岐点を計算して見て、正確な変動費と固定費の分類が難しい点や、製造原価計算書が連結決算書では開示義務がない点など難点もいろいろと見えましたが、一方で単体での決算書においては比較的精度の高い損益分岐点を求めることも出来るということもわかりました。 |