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労働生産性で分析




1人当たりの付加価値で判断

付加価値とは会社自らが生み出した価値を計る指標です。原材料を調達して商品を売り上げた場合、原材料費は外部から調達した資本でそれを売上高から引いた金額が会社が新たに生み出した価値になります。付加価値は業種や業態によっても差が出ます。たとえば商社であれば商品を仕入れて販売するだけなので、そこに新たな付加価値を加える余地は少なくなります。一方メーカーであれば原材料を仕入れ生産設備や技術力、加工費を費やして商品を作り出すため、付加価値を加える余地は多く残されています。このためメーカーは商社よりも付加価値が高い傾向にあります。こうした業種や業態に左右されずにその企業の付加価値創造力を判断する場合は、1人当たりの付加価値である労働生産性がよく使われます。今回は医療機器メーカーを対象に労働生産性を使って企業分析を行っていきます。

■今回使う指標
労働生産性
付加価値
1人当たりの売上高
売上高付加価値率
労働装備率
固定資産回転率



労働生産性を使って見る

労働生産性は従業員1人当たりの付加価値創出能力を見るものです。それでは実際に各企業の労働生産性を見ていきましょう。数字は百万円単位なので例えば8.144なら814万4千円になります。労働生産性で見るとシスメックスが1427万5千円でトップです。次いでオリンパスの814万4千円、テルモの748万3千円とが続き、最下位がニプロで263万9千円とかなりの差が有ります。シスメックスが労働生産性が非常に高い一方、ニプロは他社と比べるとかなり低いので何らかの改善策が必要であることがわかります。

オリンパステルモニプロシスメックス
労働生産性8.1447.4832.63914.275



分解して分析その1

労働生産性は指標を分解して分析することでその原因をより深く分析することが出来ます。まずは労働生産性を1人当りの売上高と売上高付加価値率に分解して分析します。なぜこの二つの指標になるのかというとこれら2つの指標を掛け合わせると再び労働生産性になるからです。これら2つの指標が改善すれば労働生産性も改善し、悪化すれば労働生産性も悪化します。つまりこれら二つの指標を見ることが結果として労働生産性の分析につながるのです。

それでは各企業の1人あたりの売上高と売上高付加価値率を見ていきましょう。1人当たりの売上高は従業員1人当たりの売上高創出能力です。売上高付加価値率は売上高に占める付加価値の割合で、その企業が高付加価値の商品を生産しているかどうか、高付加価値体質かどうかを判断します。まず1人当たりの売上高ですが、オリンパスが2323万2千円で、テルモが2426万2千円です。ここでも一番高いのがシスメックスで3416万7千円となっています。一方またしても低さが目立つのがニプロで1377万9千円となっています。

次に売上高付加価値率を見てみましょう。売上高付加価値率も1人あたりの売上高と同じような傾向で、オリンパスが35%、テルモが30.8%と近い数値で、シスメックスが41.7%と非常に高く、ニプロが19.1%と4社の中では一番低い数値となっています。このことからシスメックスが労働生産性が高いのは従業員1人当たりの売上高が大きく、さらに企業が高付加価値の商品を生産していることに起因していることがわかります。一方ニプロの労働生産性の低さは従業員1人当たりの売上高も小さく、さらに商品の付加価値も低いことが原因であることがわかります。ニプロが労働生産性を上げるためには従業員1人当たりの売上高を上げ、高付加価値商品を開発していくことが重要であるといえます。

オリンパステルモニプロシスメックス
労働生産性8.1447.4832.63914.275
1人当たりの売上高23.23224.26213.77934.167
売上高付加価値率35%30.8%19.1%41.7%



分解して分析その2

次に労働生産性を売上高付加価値率と労働装備率と固定資産回転率に分解して分析して見ましょう。この3つの指数も掛け合わせると労働生産性になります。労働装備率は従業員1人当たりの固定資産の金額のことで、この数値が高いほど少人数で運用される機械化された生産形態であるといえます。固定資産回転率は固定資産を有効活用して売上を伸ばしているかどうかを見る指標です。この3つの指標を改善することで労働生産性も向上します。労働生産性は高付加価値な企業体質であり、工場の機械化も進み、固定資産を有効活用している企業ほど高くなるということです。

それでは各企業の売上高付加価値率と労働装備率と固定資産回転率を見ていきましょう。すでに上記でも見たとおり売上高付加価値率ではシスメックスが高くニプロが低いということがわかります。労働装備率ではどうでしょうか。労働装備率ではテルモ以外それほど差が有りません。唯一テルモが27.01%と他社の倍近い数値となっています。テルモはそれだけ1人当たりの固定資産の額が多く、機械化、自動化が進んでいるということがわかります。

次に固定資産回転率を見て見るとシスメックスが最も高い数値となっています。シスメックスは固定資産を効率的に活用して売上につなげていることがわかります。テルモは労働装備率が高い一方で固定資産回転率は低い数値となっています。機械化、自動化がうまく売上につながっていないのか、もしくは無駄な固定資産が含まれている可能性が有ります。ニプロも0.92とテルモについで低い数値となっています。ニプロも固定資産をうまく有効活用できていないということがわかります。このことからニプロが労働生産性が低いのは企業として付加価値の高い商品を生産することに苦戦し、さらに固定資産も有効に活用できずうまく売上につながっていないことが原因であることがわかります。ニプロの課題は商品開発力と固定資産の効率的な活用だといえるでしょう。シスメックスの場合は高付加価値の商品の展開と固定資産の有効活用による売上増達成が高い労働生産性を実現している要因であるといえます。

オリンパステルモニプロシスメックス
労働生産性8.1447.4832.63914.275
売上高付加価値率35%30.8%19.1%41.7%
労働装備率14.6827.0114.8215.72
固定資産回転率1.580.890.922.17



各社の財務データ(2014年・百万円)


オリンパステルモニプロシスメックス
付加価値250,046144,15457,61077,103
営業利益73,44565,28812,28932,870
人件費149,03648,54420,17033,117
減価償却費26,00230,32225,1519,960
賃借料1,563--1,156
従業員数30,70219,26321,8265,401
売上高713,286467,359300,752184,538
固定資産450,963520,332323,53484,935
労働生産性8.1447.4832.63914.275
1人当たりの売上高23.23224.26213.77934.167
売上高付加価値率35%30.8%19.1%41.7%
労働装備率14.6827.0114.8215.72
固定資産回転率1.580.890.922.17




※参考資料


損益分岐点で分析 || 付加価値を計算してみる
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text 2015/02/16




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