HOME > 安全性分析TOP > 現金主義、発生主義、実現主義の違いについて

現金主義、発生主義、実現主義の違いについて



費用と収益の認識

どの時点を費用、収益発生とみるか

損益計算では収益と費用をどの期間に帰属させるかが問題となってきます。これを費用、収益の認識の問題といいます。まず費用について見て行きますが、例えば水道光熱費のケースで見ると、実際に水道や電気を使用した翌月に水道光熱費を支払う場合、費用が発生した時点と、現金を支払った時点が異なることになります。

電気代の費用発生と支払時期のずれ

ほかにも家賃を事前に支払うケースなどでも家賃を支払った時点と入居している時点が異なります。このように費用の発生と現金の支払いのタイミングが異なるケースがある場合、どの時点を費用発生とするかを一定のルールに基づき決めておかないと正確なその期間での損益を把握することが難しくなります。あるケースでは費用が発生した時点で費用として扱い、別のケースでは現金を支払った時点を費用として扱うなどすると、その時のさじ加減でその期の損益が変わってしまうからです。

家賃の費用発生と支払時期のずれ

収益の認識のタイミング

次に収益の場合で見て行きます。製造業の場合材料を仕入れ、製品を製造し、商品が完成し、そして商品を販売、最後に商品の代金を回収します。これを商品が完成した時点で収益が発生したとするか、販売時にするか、それとも代金を回収した時点で発生したとするかで収益のとらえ方は異なります。こちらもあらかじめ一定のルールに基づいて決めておかないと、どの時点で収益とするかの認識が混在してしまい、正確なその期の収益を把握することが難しくなります。

どの時点で収益と認識するか

現金主義、発生主義、実現主義がある

費用と収益の認識基準には現金主義、発生主義、実現主義の3つの考え方が有ります。それぞれの考え方を以下で見ていくことにします。



現金主義とは

実際の現金の収支に基づく

現金主義とは実際の現金の収支に基づいて費用と収益を計上する考え方です。ただ現金の収支に基づいて計上すればいいのでやり方も簡単で、客観性、検証可能性にもすぐれています。現金の収支に基づいているため未実現利益が計上されてしまう恐れも有りません。

正確な期間損益が把握できない

ただし現金主義にも問題は有ります。それは期間損益を正確に把握できないことです。期間損益が正確に把握できないとはどうことを詳しく説明していきましょう。現在の企業会計では企業は継続して事業を行っていくことが前提となっています。そのため現金取引だけでなく信用取引も発達しています。信用取引とは広義では現金取引以外の取引すべてをさします。信用取引には掛け取引や貸付け、借り入れ、手形などから、未払い金や未収金、未払い収益や未払い費用などが有ります。信用取引を利用することで例えば掛けで商品を販売した場合、代金の回収が来期にずれ込むことが有ります。

費用収益の発生と現金収支のずれ

本来今期に発生したはずの商品売買の収益が、現金主義では現金が回収される来期に計上されることになります。これでは今期と来期のそれぞれの期間の損益を正確に表すことができません。これが現金主義では期間損益が正確に把握できないという理由なのです。

固定資産は費用発生が長期化する

これは固定資産の長期化でも同様の問題が生じます。固定資産が長期にわたって使用され、その価値が消費されていきます。これが固定資産を購入した期に一度に費用計上すると、これも正確な期間損益を表しているとは言えなくなります。本来なら固定資産が使われる期間にわたって費用計上されていくべきです。これは次で説明する発生主義という考えに基づく減価償却費という費用勘定で処理されます。

有形固定資産の購入と価値消費期間



発生主義とは

発生主義は経済価値の増減を基準に

発生主義では現金の収支ではなく、経済価値の増減に基づいて費用と収益を計上します。減価償却費や貸倒引当金の設定、見越し・繰り延べ処理などは発生主義の考えに基づき計上されるものです。減価償却や貸倒引当金、見越し・繰り延べ処理については以下で解説します。

減価償却費

建物や機械などの固定資産は長期に渡って使うものです。固定資産の価値は徐々に減少して行き最後はすべて費用として償却されます。この費用として償却されるタイミングをいつにするのかというのが問題となってきます。経済価値が徐々に減少していくのであれば発生主義に従えば、費用もその期間に分散して償却していくべきです。価値の減少に応じて期間に分散して費用計上していく方法を減価償却といい、計上される費用を減価償却費といいます。償却の仕方は償却期間にわたって毎期定額で償却していく方法「定額法」と一定のパーセンテージをかけ、結果最初が一番多く、徐々に減っていく形になる「定率法」があります。

これがもし現金主義に基づくのであれ固定資産を購入した期にすべて費用計上されてしまいます。

貸倒引当金とは

売掛金や受取手形などの金銭債権は、取引先の倒産などの理由により一定の確率で回収不能になることが有ります。貸倒引当金とはこのような将来の貸倒れに備えて、回収不能見込み額を算定し、費用として計上しておくものです。

見越し、繰り延べとは

見越しとはもし当期中に収入や支出がなかったとしても、発生主義の観点から見て計上すべきだと判断される場合、その収益と費用を計上する処理を行うことです。逆に繰り延べとは当期に収入や支出があったとしても、発生主義の観点からその収益と費用を来期以降に計上する処理を行うことです。

発生主義と現金主義の違い

発生主義と現金主義のそれぞれの長所短所は以下の通りです。

現金主義発生主義
期間損益の把握に問題あり正しい期間損益の把握ができる
正確な損益計算の数値利益の確実性に問題あり



実現主義とは

実現主義は商品の販売と対価の受け取りを基準に

発生主義はその期に発生した収益と費用を、その期に計上するという意味で期間損益を正確に把握できるメリットは有りますが、収益は発生した段階ではまだ利益が実現すると確定したわけでは有りません。商品が販売されて始めて収益が確定するのです。そこで実現主義という考えに基づき、商品が売れた段階で収益として計上するという考え方が有ります。実現主義であれば発生主義が抱える利益の不確実性という問題を克服することが出来ます。実現主義では取引相手に商品やサービスを提供し、さらに対価として現金や現金等価物を受け取ったときにはじめて収益が実現したと認識されます。この2つの用件が満たされないと実現したことにはなりません。ちなみに現金等価物とは売掛金や受取手形等の売上債権をさします。

実現主義で収益の確実性と客観性を確保

また発生主義における収益ではまだ生産段階にあるので、その金額は見積もりや主観的なものが介入する危険性が残されています。一方で実現主義であれば客観的に立証可能である第三者との取引に基づいて収益の金額を計上するので、客観性をしっかりと確保することが出来ます。実現主義では収益の確実性、客観性のどちらも確保することが出来るのです。近代の企業会計では基本的に収益の認識には実現主義が、費用の認識には発生主義が適用されます。

発生主義、現金主義、実現主義の収益の認識時期




※参考資料
らくらく会計入門
経営分析の考え方・すすめ方
決算書 読解力の基本が身につく88の極意


運転資本の種類と計算式、正味運転資本、必要運転資本とは || 利益は意見、キャッシュは事実
TOPへ HOMEへ

最終更新日 2017/01/07
公開日 2015/04/23




安全性分析一覧















Copyright(C)2013 kain All Rights  Reserved
当サイトはリンクフリーです。掲載内容の無断転載はいっさい禁止します。